誰か知る松柏後凋の心

たれかしる しょうはくこうちょうのこころ

国循の情報システムを管理する部署の仕事とは

今回は,私が国循でどのような仕事をしていたか,について簡単に書きたいと思います。

私は国循において,医療情報部長と情報統括部長という職にありました。(ついでに図書館長もしていましたが,それはおいておきます)

医療情報部は,国循の病院業務で利用する情報システム*1(たとえば電子カルテ)を管理する部署です。

情報統括部は,病院を含め,研究所その他国循全域で利用する情報システム*2を管理する部署です。

下の図は,私が2013年4月に作成した組織のイメージ図で,当時,国循のホームページに掲載されていたものです。

 f:id:skuwata:20160512125837p:plain

国循は,国民に「循環器病に関する高度な医療サービス」を提供する使命をもった組織であり,国循の情報システムは、その主体たる病院の医療従事者(医師,看護師など)や研究所の研究者(ここでは,あわせて「ユーザ」といいます)の業務の効率化に資するインフラ(共通基盤)となります。

ただし,国循がナショナルセンターであるからといって,特別な情報システムがあるわけでなく,技術面だけみれば,一般的な情報システムと同じです。

しかしながら,一般的に,医療機関における情報システムは,組織ごとの個別性が高いことが特徴といわれています。つまり,国循で構築した情報インフラを,他の医療機関に流用しようと思っても,相当に手を入れないと使い物になりません。これは,医療機関ごとに,各職種の担当する業務内容と業務の流れが大きく異なることによるものです。つまり,情報システムの使い方(「運用」といいます)がちがうのです。

多くの場合,病院では,すでに完成したシステム(パッケージ)を調達し,現場のユーザの業務のやり方に合わせる形で,楽に情報システムが運用できるようにシステムを改造します*3。よって,病院ごとに業務のやり方がかなり違うため,それに合わせる形で作られた情報システムも,病院によって大きく違うものとなるということです。

このようなシステムは、ユーザにとって利便性が高く喜ばれるものですが,その一方で,その病院に合わせて色々と改造する部分が多くなるため,調達費用が高くなるという問題があります。ここで、ユーザと経営陣との間で利害対立が生まれます。

つまり,現場の人間は,

お金をかけてでも,自分達の業務がしやすい情報システムが欲しい

のに対し,経営陣は,

できるだけお金をかけずに情報システムを入れて欲しい

と思っているわけです。

また,予算が限られているため,A部署の要望で作ったものが,B部署には気にくわない,「そんなお金があるならうちのために使ってくれ」というような身勝手な現場の部署間での利害対立も往々にしてあります。

簡単にいえば,私のいた部署は,このような面倒くさい利害対立者の間に入って,

なんとかやりくりする

ことが仕事です。かっこよく言えば,マネジメントする,ということになりますが,格好良すぎて実態と合いません(笑)。本音でいえば,いろんな現場を回って

まあまあ,そこをなんとか。

と言って回る「やりくり部隊」と表現するのが最適だと思っています。

きちんと表現するならば,次のとおりになるでしょうか。

国循情報システムの管理を担当する部署(医療情報部・情報統括部)は、主役たるユーザ(現場で働く人たち)のニーズにこたえるべく、ユーザの日常業務の中から問題点を抽出して解決に導き、また国の施策としての新たなサービスの構築や、既存サービスの改善にユーザとともに取り組む一方で、これらの業務を、経営陣の要求(予算・人的資源の制限)に応じて遂行できるよう、ユーザ間・ベンダ(情報システムの構築を担当する企業)間・ユーザ-ベンダ間のさまざまな利害調整を行う部署です。

 おわかりいただけましたでしょうか。今回は以上です。

国循官製談合事件,いわゆる国循サザン事件について知りたい方は,こちらのサイトをごらんください。↓

southerncase.shig.org

*1:JUNHIS(ジュニス)と呼ばれていました。循(JUN)+Hospital Information System。

*2:NCVCネットワークと呼ばれていました。NCVCは国循の英語表記の略名です。

*3:もちろん,トップダウンが効く立派な組織では,現場の業務のやり方をシステムに合わせろ!改造は一切せんぞ!というすばらしい例もあろうかと思います。