”被告人による証人尋問”を体験して
第7回公判では,被告人である私自身が証人(検察側証人)の反対尋問を行う場面がありました。
ほとんどの公判において,尋問は,検察官と弁護人によって行われるものです。被告人が尋問を行うことは,制度上許されることであっても,実際にはなかなかあることではないでしょう。
法律を学んだこともなく,法廷のマナーも十分に理解していない私が,本当に法廷に立ち,証人を尋問してよいのか・・・。初めのうちはかなり戸惑いがありましたが,高見秀一弁護士からは「大丈夫ですよ,その方がいいから,そうしてください」とのご意見があり,被告人による反対尋問が実現することになりました。
続きを読む邂逅
法廷の休憩時間に,私が廊下を歩いていると,突然,私の後ろから,私の昔のあだ名で呼ぶ声があり,私は驚いて振り向きました。
そこには,すらりとした長身の,私と同年代ぐらいの男性が立っていたのです。
もう一度,彼は「久しぶり」と私に声をかけました。
その姿は,まぎれもなく私の中学時代の同級の親友でした。当時より痩せ,そして当然私と同様,中年となった彼の姿は,わずかながら昔の面影を残していました。
「あ~A君」
彼の名前はすぐに出てきました。最近出会った人の名前は忘れるのですが,やはり子供の頃の記憶は長く残るものです。
A君は,わざわざ名古屋から,私の裁判の傍聴のために駆けつけてきてくれたのです。私たちは,ともに同じ中学同じ部活(吹奏楽部)に所属し,学校の行き帰りもずっと同じでした。そのような仲のよい友人でしたが,中学卒業と同時にそれぞれ違う高校に進学し,その後は10年に1回ぐらい,本当に,ごくたまに会うぐらい疎遠になっていました。彼と最後に会ったのは,およそ15年ほど前で,その後は互いの連絡先がわからなくなっていたのです。
A君は,その後もネットで私の名前を検索しては,私の所在を確認してくれていたようです。それでも,私と連絡を取ることに躊躇があり,そのままになっていたのです。
ある日,A君は,ネットで私の事件を知り,イスから転げ落ちるほど驚いたそうです。すぐに同じ職場の方がこのブログを見つけてくれて,彼は私の記事をみて,公判を傍聴することを決意してくれたのです。本当にありがたく,うれしいことです。
公判日は私に時間の余裕がなく,せっかく出会ったA君と会話することができませんでした。そこで,今日,私は名古屋に出向き,A君と久々に語り合う機会を得ました。気がつけばともに五十路に手が届く年齢となり,周りから見れば「ふたりのおじさんが仲よさそうに話している図」にしか見えなかったでしょうが,当人たちは中学生に戻っていたかのように昔話を楽しみました。
齢を重ねる,ということは,自分の歴史を刻むことであり,その過程で多くの記憶を残します。その記憶には,悲しかったこと,憤りを感じたこと,もたくさんあったはずです。しかし,A君との会話の中でよみがえった記憶には,ふしぎとそのような感覚はありませんでした。むしろ,そのような感情は,いつのまにか楽しかった記憶に変わっていたことに,私は感動を覚えました。
国循官製談合事件(国循サザン事件)で私にかけられた冤罪は,確かに辛く,苦しいものではありますが,これも,いつか楽しい記憶に変わるのだろうな,と予感します。
確かに,傍目にみて,今の私は不幸のどん底にあるように見えるかもしれません。しかし,この事件があったからこそ生まれた出会いには,その不幸を吹き飛ばすほどすばらしいものがあります。
上に挙げたA君のように,旧知の方々との再会もあります。
また,事件の後に得た,新しい出会いもあります。
支援の会は,私が刑事事件で起訴されたことにより休職を余儀なくされた後,とあるコワーキングスペースで偶然知り合った方とのつながりで生まれたものです。私と彼らは,知り合ってからまだ1年も経たない間柄ですが,私にはすでに旧知の仲のような固い絆を感じます。同会のブログ記事をお読みいただければおわかりのとおり,彼らには,私の公判の際,欠かさず裁判所まで足を運んでいただいています。本当に感謝の念に堪えません。
ブログを黙々と読んでくださる方もたくさんいらっしゃると思います。もしよろしければ,私と知り合いの方(もちろん,そうでない方も)Facebookでご連絡ください。少しでも多くの方にこの事件の真相を知っていただきたいと思っています。皆様の声が,私の今後の活動において,大きな心の支えになります。
Facebookをお使いでなければ,支援する会の作って下さったお問い合わせフォームからご連絡ください。(このブログのサイドバーにもリンクがあります)
どうかよろしくお願い申し上げます。
被告人は弁護団の一プレーヤー
刑事事件の弁護人の『選び方』について,私が尊敬してやまない八田隆氏のブログ *1にこのような記載があります。
「高名な弁護士先生に全てをお任せしたい」という人もいれば、私のように「インフォームド・コンセントが重要。自分も弁護団の一員として機能したい」という人もいると思います。
無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その6 「被告人ができること 各論(2) 優秀な弁護人を選ぶこと」 7/24/2014
私は,自分が事件に巻き込まれたとわかったとき*2,正直言って,これほど冷静に「弁護士をどうやって選ぶか」について考える余裕はありませんでした。知り合いに弁護士はいないし,そもそも逮捕されてもいないのに弁護士が必要なのか? すらよくわかっていない状況でした*3。
*1:2014年07月24日 - 「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン
*2:私が事件を認知したのは,2014年2月の国循に対する強制捜査があったときです。
*3:もちろん,今はよく分かっています。弁護人は逮捕前から選任しておくべきです。そうでなければ,警察や検察のいいなりとなって事実と異なる調書がつくられてしまうことでしょう。
第3回『国循サザン事件』公判を終えて(本人感想)
昨日の公判は無事終わりました。わざわざ傍聴に来て下さった皆様,Facebookで応援してくださった皆様,ありがとうございました!
今回の証人である調達責任者の西田氏の証言は,私が想定していたものよりもかなり「トーンダウン」していました。
続きを読むブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪の疑いで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われている事件のことです。詳しいいきさつは,「支援する会」のブログ
https://southerncase.shig.org/
をご覧下さい。
勾留生活~開かない窓,閉まらない窓~
勾留生活~時計のない拘置所で時刻を教えてくれるものとは?~
前回のブログでは,勾留生活で一番辛かったこととして,拘置所では時計がなく,時刻を知る手段がないことを挙げました。
ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪のかどで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われている事件のことです。詳しいいきさつは,
国循サザン事件―0.1%の真実― | 国循官製談合事件の容疑者として起訴された桑田成規さんを支援します
をご覧下さい。
今回は,この話の続きで,時計のない拘置所にあって,時刻を教えてくれるものがある,ということについて書きたいと思います。
続きを読む勾留生活でいちばんつらかったこと
今回は,いったん『国循着任直後に直面した課題シリーズ』を離れて,別の話題で記事を書きます。
ブログを途中から読み始めた方のために:この事件は,私が官製談合防止法違反という無実の罪のかどで起訴され被告人となり,現在,大阪地裁で裁判が行われている事件のことです。詳しいいきさつは,
国循サザン事件―0.1%の真実― | 国循官製談合事件の容疑者として起訴された桑田成規さんを支援します
をご覧下さい。
私は『国循サザン事件』で無実の罪の疑いをかけられ逮捕され,大阪拘置所に24日間勾留されました。勾留開始とほぼ同時に接見禁止処分に付され,弁護士以外との面会はできない状況でした。
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